買い物のついでに立ち寄った修理屋さんに、この靴修理できるかきいてみたら、「この靴は修理する靴じゃないよ」とことわられたんだけど。そうなの?結構いい値段したんだけど…。できないのかな?
おそらく、こちらの靴底が『難接着のユニットソール』(ヒール一体型の靴底)という点でそのような判断をなされたのではないでしょうか?詳しくご説明いたします。
サバロンアッシュと言う阪急メンズ館で取り扱いのあった靴です。ブランドタグが摩耗して私も一見どこの靴か分かりませんでしたが、ユーザー様の「結構いい値段した」と言うのもうなずけます。
ユーザー様はかかとの摩耗と周囲に張り付けてある革の捲れを気にされています。
冒頭で申し上げた「難接着のユニットソール」は塩化ビニールでできており、削ると溶けます。そしてボンドをはじいてしまいます。ボンドをはじく点については表面を専用の薬剤で処理してあげると接着できますが、素材が柔らかいこともありクギによる『追い固定』ができないのです。このような点において、修理で取り付けたパーツが外れる可能性が高く。ユーザー様に不利益が生じる可能性がございます。他店様においてはそのようなご判断の下、お断りされたのだと推察致します。
こんな修理方法はいかがでしょうか?
まずはソールの根本まで削りきってしまいます。
削って薄くなった箇所に本革の土台を作ります。しっかりと表面処理をしてボンドで固定します。
その後、靴の内側からスクリュークギを打ち込みます。ソールを中底と革の積み上げでサンドして、クギを効かせるわけです。
ネジのようなクギが革の繊維に絡んで、しっかりと固定することが可能です。
After
いかがでしょうか?これで修理したパーツが外れることはほぼありません。靴底の固定において、ボンドのみではどうしても不十分で、修理屋としては不安を抱えながらのご案内になってしまいます。そんなときは一歩踏み込んで、弱点を改善できる修理をご提案するよう心がけます。もちろん、元素材の劣化が進んでいないか等様々注意をした上で、ユーザー様と内容を決めていきます。
この度は、ご相談いただき誠にありがとうございました!
他店様でお断りされたものでもご相談下さい
今回の修理
●カカトの土台製作(本革) 3300円
●カカトのゴムパーツ 2200円
納期:2~3日